

「バルヴェール」といえば、かつてサッカーのゴンこと中山雅史選手がコマーシャルに出演していたことで記憶している、という人も多いことでしょう。
しかし、この「バルヴェール」がどこの国のミネラルウォーターかということは、意外と知られていないようです。「バルヴェール」の水源は、ベルギーのアルデンヌ地方に広がる森林地帯の奥深く“エタール”という小さな町の近くにあります。

ベルギーとはいってもこのエタールの町はフランスとの国境からわずか20キロほどしか離れていないため、フランス側からレンタカーに乗って行くことにしたのですが、驚いたのはフランスとベルギーの国境のゲートに人の姿がなく、パスポートのチェックすらなしに、まったくのフリーパスで入国できたこと。僕もこれまでいろいろな国に行きましたが、こんな経験は初めてでした。
エタールの町は想像していたよりずっと小さく、町というよりは集落といった方がいいと思います。町にはホテルもないので、しばらく走ってモーテルを探さなくてはなりませんでした。ただ緯度が高いわりに周辺の森には落葉樹が多く、その風景はどこか日本の高原を思わせるものがあり、親しみを感じます。そして森の中に分け入ると、いたる所から水が湧き出て清冽な流れをつくっており、こんな美しい森がヨーロッパにもあったのかと、思わず感嘆の声を洩らしてしまいました。また、集落には湧水を利用した古くからの洗い場がいくつもあり、この地に住む人々と湧水との深い関わりがわかります。

そしてもっと驚いたのは、この広大な森の奥に、2000年以上も昔の古代ローマ時代の遺跡が、ほとんど手つかずのまま放置されていたことでした。地元の人の話では、この一郭にかつてローマ軍の駐屯基地があり、現在遺されているのは、その門扉と城壁の一部なのだそうです。
これほど貴重な遺跡をただ放置しておくのにはわけがあります。それはこのエタールの森一帯が、ベルギー政府の定める環境保全地域であり、勝手に人の手を加えることができないからです。保護地域はじつに3000ヘクタールもの広さに及び、誰でも政府の許可がないと立ち入ることもできません。環境保護のためには古代ローマの遺跡さえ放っておくというのも、いかにもヨーロッパらしい厳格さだと感心しました。

特別な許可を得て、森に湧き出る水源のいくつかを見せてもらいましたが、実際にボトルに詰める水の水源は別の場所にあり、そこには関係者ですら立ち入ることができないのだそうです。森には“グリーンポリス”と呼ばれる自警団が定期的に周回して、人や車の立ち入りをチェックしているといいます。しかも森の環境を守るため、水は地下に埋設されたステンレス製のパイプで2キロも離れた工場まで一切空気に触れることなく運ばれるのだとか。「何もそこまでしなくても」とつい思ってしまうくらい、ヨーロッパの水源保護は徹底しています。
この美しいエタールの森の水を、最新設備を持つ工場でボトリングしたのが、私たちの飲んでいる「バルヴェール」です。“バルヴェール”というのはフランス語で「緑の森」という意味。つまりこのエタールの森そのものが、ミネラルウォーターの商品名になっているのです。
